ネットワークという言葉は、かなり広い意味で使われます。

家庭のWi-Fi、学校や会社のLAN、スマホの通信、クラウド上のサーバ、Webサイトへのアクセス。これらはすべてネットワークと関係しています。

一方で、「ネットワーク」「インターネット」「Wi-Fi」「Web」「TCP/IP」などの言葉は、日常会話ではまとめて使われがちです。普段使うだけならそれでも困らないことがありますが、ITパスポートや基本情報技術者試験を勉強したり、Web開発やクラウドを扱ったりすると、少しずつ区別が必要になります。

まずは、ネットワークとは何か、データ通信とは何か、LANとWAN、有線と無線、通信方式、トポロジ、通信の宛先範囲といった基本概念を順番に整理します。

OSI参照モデル、TCP/IPモデル、IPアドレス計算、DNS、HTTP/HTTPSの詳細、AWS・Azure・GCPの具体的な設定、DockerやKubernetesのネットワーク詳細は、それぞれ独立して整理した方が理解しやすい内容です。最初の段階では、細部よりも用語どうしの位置関係を押さえることを優先します。

ネットワークとは何か

ネットワークとは、複数の機器がデータをやり取りするための仕組みです。

昔の説明では「複数のコンピュータを接続する仕組み」と書かれることが多かったと思います。これは間違いではありません。ただ、今の感覚では、ネットワークにつながるものはコンピュータだけではありません。

たとえば、次のようなものがあります。

  • PC
  • スマホ
  • タブレット
  • サーバ
  • ルーター
  • プリンター
  • IoT機器
  • クラウド上の仮想サーバ

このように、ネットワークにつながる機器や通信主体を、まとめてノードと呼ぶことがあります。

家庭の中にもネットワークがあります。学校や会社にもネットワークがあります。データセンターにも、AWS・Azure・GCPのようなクラウドにもネットワークがあります。

つまり、ネットワークはインターネットだけを指す言葉ではありません。

インターネットは、世界中のネットワークをつないだ巨大なネットワークです。その前提として、まず家庭内、会社内、クラウド内など、それぞれの小さなネットワークがあります。

家庭、学校、会社、AWS・Azure・GCPなどのクラウドがそれぞれ内部ネットワークを持ち、インターネットを通じてつながっている全体図

ここで大事なのは、ネットワークを「どこか遠くにあるもの」ではなく、身近な機器同士の通信からクラウドまでを含む広い仕組みとして見ることです。

データ通信とは何か

ネットワークでは、さまざまなデータがやり取りされます。

たとえば、次のようなものです。

  • メールの本文
  • Webページ
  • 画像
  • 動画
  • 音声
  • APIレスポンス
  • ゲームの通信データ
  • ファイル

人間から見ると、これらは文章、画像、動画、音声のように見えます。しかし、ネットワーク上ではデータとして扱われます。

通信では、このデータを決まったルールに従って相手に届けます。

この「決まったルール」をプロトコルと呼びます。

たとえば、Webページをやり取りするためにはHTTPやHTTPSが使われます。ネットワーク全体ではTCP/IPという考え方がよく出てきます。LAN内の通信ではEthernet(イーサネット)も関係します。

ただし、この記事ではそれぞれのプロトコルの詳細には踏み込みません。ここでは、プロトコルとは「通信するための約束ごと」だと理解できれば十分です。

通信の形としては、クライアントとサーバの関係もよく出てきます。

たとえば、ブラウザでWebサイトを見るとき、ブラウザ側はリクエストする側です。Webサーバはそれに応答する側です。このような関係を、クライアント / サーバと呼びます。

一方で、端末同士が対等に通信する考え方もあります。これはピアツーピアと呼ばれます。この記事では詳しく扱いませんが、ネットワークには「サーバに問い合わせる通信」だけでなく、「端末同士が直接やり取りする通信」もあります。

通信では、相手を識別するための情報も必要です。

たとえば、後続の記事では次のような言葉が出てきます。

  • MACアドレス
  • IPアドレス
  • ポート番号
  • URL
  • ドメイン
  • ホスト名

この記事では、それぞれの詳細までは扱いません。今は、通信相手や通信先のアプリケーションを識別するために、いろいろな種類のアドレスや名前が使われる、と押さえておけば十分です。

もうひとつ、通信を考えるときに混同しやすいのが帯域幅とレイテンシです。

帯域幅は、一度にどれだけ多くのデータを運べるかの目安です。よく「回線が太い」と表現されるものに近いです。

レイテンシは、通信の反応が返ってくるまでの遅れです。たとえ帯域幅が大きくても、レイテンシが大きいと反応が遅く感じることがあります。

どちらも「速い・遅い」という言葉でまとめられがちですが、実際には別の指標です。

回線交換とパケット交換

ネットワークの基本的な通信方式として、回線交換とパケット交換があります。

回線交換は、通信している間、専用の経路を確保する考え方です。昔の電話をイメージすると分かりやすいです。通話している間は、その通話のための経路が確保されます。

一方、パケット交換は、データを小さな単位に分けて送る考え方です。この小さな単位をパケットと呼びます。

インターネットは、パケット交換の考え方で理解すると分かりやすくなります。

大きなデータをそのまま一つの塊として送るのではなく、小さく分けて送ります。そして、受け取る側で必要に応じて組み立てます。

回線交換とパケット交換を簡単に比べると、次のようになります。

方式考え方例としてイメージしやすいもの
回線交換通信中に専用の経路を確保する昔の電話
パケット交換データを小さく分けて送るインターネット通信

もちろん、現代の通信は単純にこの2つだけで説明しきれるものではありません。ただ、ネットワークの入口としては、「専用の通り道を確保する考え方」と「細かく分けて送る考え方」の違いを押さえておくと理解しやすくなります。

LANとWAN

ネットワークの範囲を表す言葉として、LANとWANがあります。

LANはLocal Area Networkの略です。限られた範囲のネットワークを指します。

たとえば、次のようなものです。

  • 家庭内ネットワーク
  • 学校内ネットワーク
  • 会社内ネットワーク
  • オフィス内ネットワーク

WANはWide Area Networkの略です。離れた場所にあるネットワーク同士をつなぐ広域ネットワークです。

たとえば、東京の本社と大阪の支社をつなぐようなネットワークや、複数の拠点をつなぐ企業ネットワークはWANとして考えられます。

今はクラウドも関係します。会社のネットワークから、AWS・Azure・GCP上のシステムへ接続することも普通にあります。

昔は、LANは社内、WANは拠点間、という説明でかなり理解できました。今でもその考え方は役立ちます。

ただし現代では、VPN、クラウド、リモートワーク、ゼロトラストのような考え方もあり、「ここまでが社内LANで、ここからが外」と単純に見えないことも増えています。

この記事では、まず次のように押さえます。

用語意味
LAN限られた範囲のネットワーク家庭、学校、会社、オフィス
WAN離れたネットワークをつなぐ広域ネットワーク拠点間接続、クラウド接続

有線と無線

ネットワークへの接続方法には、有線と無線があります。

有線は、ケーブルを使って接続する方法です。LANケーブルを使ってPCやスイッチ、ルーターをつなぐような通信です。

無線は、電波を使って接続する方法です。代表的なのがWi-Fiです。

ここで重要なのは、有線や無線は接続方法の違いであって、インターネットそのものではないということです。

たとえば、自宅でスマホがWi-Fiにつながっていても、それはスマホが無線で家庭内ネットワークに接続しているという意味です。その先でインターネットに出るには、ルーターや回線が関係します。

逆に、有線LANでPCをルーターにつないでいても、回線が切れていればインターネットには出られません。

つまり、Wi-Fi、有線LAN、インターネットは同じものではありません。

この違いは、後続のイーサネットやWi-Fi、ルーターの記事で重要になります。

物理トポロジと論理トポロジ

トポロジとは、ネットワークのつながり方を表す考え方です。

トポロジには、物理トポロジと論理トポロジがあります。

物理トポロジは、実際の配線や機器の接続の形です。

たとえば、どのPCがどのスイッチにつながっているのか、ルーターとスイッチがどう配線されているのか、といった見た目の接続です。

論理トポロジは、データがどのように流れるかという見方です。

見た目の配線と、実際の通信の流れが必ず一致するとは限りません。

たとえば、物理的には同じスイッチにつながっていても、VLANによって論理的に別のネットワークとして扱われることがあります。また、クラウドや仮想ネットワークでは、物理的な配線が見えない状態でネットワークを設計します。

ここでは、トポロジを「線の形を暗記するもの」としてではなく、物理的なつながりと論理的な通信の流れを分けて見るための考え方として押さえるとよいです。

ユニキャスト・ブロードキャスト・マルチキャスト

ネットワークでは、誰に向けて通信するかによって、通信の種類を分けて考えることがあります。

代表的なのが、ユニキャスト、ブロードキャスト、マルチキャストです。

ユニキャストは、1対1の通信です。

たとえば、あるPCから特定のサーバへアクセスする通信は、基本的にはユニキャストとして考えられます。

ブロードキャストは、同じ範囲にいる全員へ送る通信です。

「この中に、この条件に合う相手はいますか」と全員に問い合わせるようなイメージです。後続の記事で扱うARPでは、このブロードキャストの考え方が重要になります。

マルチキャストは、特定のグループに向けて送る通信です。

全員ではなく、必要なグループだけに届ける考え方です。

簡単に整理すると、次のようになります。

種類宛先の考え方イメージ
ユニキャスト1対1特定の相手に送る
ブロードキャスト同じ範囲の全員全員に問い合わせる
マルチキャスト特定のグループ必要なグループにだけ送る

ユニキャストは1対1、ブロードキャストは全員宛て、マルチキャストは特定グループ宛てであることを示す比較図

ここでは、それぞれの細かい仕様よりも、通信の宛先範囲が違うことを理解できれば十分です。

コネクション型とコネクションレス型

通信の考え方には、コネクション型とコネクションレス型があります。

コネクション型は、通信を始める前に相手とやり取りの準備をする考え方です。

相手がいることを確認し、通信の流れを管理しながらデータを送ります。

コネクションレス型は、事前の接続確立を前提にしない考え方です。

送る側は、必要な情報を付けてデータを送ります。相手との事前準備や、届いたかどうかの細かい管理は、プロトコルやアプリケーション側の設計によって変わります。

この話は、後続のTCPとUDPの記事につながります。

一般的には、TCPはコネクション型、UDPはコネクションレス型として説明されます。

ただし、ここではTCPの3ウェイハンドシェイク、順序制御、再送制御、輻輳制御までは扱いません。今は、通信には「準備してから送る考え方」と「事前準備なしで送る考え方」がある、という程度で十分です。

イーサネット、インターネット、ウェブの違い

最後に、混同しやすい言葉を整理します。

ここでは、Ethernet(イーサネット)、Internet(インターネット)、Web(ウェブ)を分けて考えます。

用語日本語での呼び方ざっくり役割
Ethernetイーサネット主にLAN内で通信するための仕組み
Internetインターネット世界中のネットワークをつないだ仕組み
WebウェブHTTP/HTTPSでページやAPIをやり取りする仕組み

イーサネットは、主にLAN内の通信を理解するうえで重要な仕組みです。LANケーブルやスイッチ、MACアドレス、イーサネットフレームなどの話につながります。

インターネットは、世界中のネットワークを相互につないだものです。IP、ルーター、経路制御などの話につながります。

ウェブは、インターネット上で使われる仕組みの一つです。HTTPやHTTPSを使って、WebページやAPIをやり取りします。

つまり、ウェブはインターネットそのものではありません。インターネット上で動く代表的な仕組みの一つです。

また、Wi-Fiは無線でネットワークにつなぐための仕組みです。Wi-Fiにつながっていることと、インターネットに接続できることは、関係していますが同じ意味ではありません。

EthernetはLAN内通信、Internetはネットワーク同士の接続、WebはHTTP/HTTPSのやり取りとして役割を分けて示した概念図

この区別ができると、後続の記事で出てくるイーサネット、IP、TCP/IP、DNS、HTTP/HTTPSの説明がかなり読みやすくなります。

まとめ

この記事では、ネットワークの入口として、基本的な考え方を整理しました。

ネットワークは、複数の機器がデータをやり取りするための仕組みです。家庭、学校、会社、クラウドなど、さまざまな場所にネットワークがあります。

通信では、データを決まったルールに従って相手へ届けます。そのルールがプロトコルです。

また、ネットワークには、回線交換とパケット交換、LANとWAN、有線と無線、物理トポロジと論理トポロジ、ユニキャスト・ブロードキャスト・マルチキャスト、コネクション型とコネクションレス型といった見方があります。

さらに、イーサネット、インターネット、ウェブは同じものではありません。

それぞれを分けて考えることで、後続のOSI参照モデル、TCP/IPモデル、イーサネット、IP、TCP/UDP、DNS、HTTP/HTTPSの理解につながります。

次の記事では、ネットワークのルールや標準を誰が決めているのかを整理します。

IEEE、IETF、ICANNのような組織を知ると、ネットワーク技術が単なる暗記項目ではなく、仕様や標準に基づいて作られていることが見えてきます。