検索結果を見ていると、上位に表示されているにもかかわらず、広告が多すぎて本文を読むのが難しいWebサイトに出会うことがあります。
特にゲーム系のWikiや攻略サイト、個人運営の情報サイトでは、画面全体を覆う広告、閉じるボタンが小さい広告、本文に重なる追従広告などが表示されることがあります。
ユーザーから見ると、これはかなり不自然です。
「検索上位に出ているのに、なぜまともに読めないのか」
「Googleはこういうサイトにペナルティを課さないのか」
「結果的に広告ブロッカーを使う人を増やしているのではないか」
この疑問は自然なものだと思います。
昔のSEOでは「見えない本文」が問題になった
昔のSEOでは、ユーザーには見えないテキストをHTML上に置き、検索エンジンだけに評価させようとする手法がありました。
たとえば、背景色と同じ色の文字を置く、文字サイズを極端に小さくする、CSSで画面外に飛ばす、透明にする、といった方法です。
.hidden-keywords {
position: absolute;
left: -9999px;
}
.hidden-text {
opacity: 0;
font-size: 0;
}
こうした手法は、検索エンジンをだますためのものです。
Googleのスパムポリシーでも、白背景に白文字を置く、画像の裏にテキストを隠す、CSSで画面外に配置する、文字サイズや透明度を0にする、といった例は hidden text / link abuse として明示されています。
参考: Spam policies for Google web search
この意味では、昔のSEOスパムは「ユーザーには見えないが、検索エンジンには見える情報」を使って順位を操作するものでした。
広告で読めないサイトは、昔の隠しテキストと同じなのか
広告が前面に出て本文が読みにくいサイトは、昔の隠しテキストSEOと完全に同じではありません。
昔の隠しテキストは、検索エンジンにだけ情報を見せる行為です。
一方、広告だらけのページでは、本文自体は存在していて、ユーザーも理論上は読むことができます。
ただし、画面を覆う広告や、閉じにくい広告によって、実質的には本文へ到達しにくくなっています。
つまり分類としては、次のように分けられます。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 隠しテキストSEO | 検索エンジンには見せるが、ユーザーには見せない |
| クローキング | Googlebotとユーザーに違う内容を見せる |
| 広告過多ページ | 本文はあるが、広告によって読みにくい |
| ダークパターン | 閉じにくい、誤クリックしやすい、操作を誤認させるUI |
広告で本文が読みにくいサイトは、厳密には「隠しテキスト」とは別ですが、ユーザー視点ではかなり近い問題です。
なぜなら、検索エンジンには本文が認識されているのに、実際のユーザーは広告に邪魔されて本文を読みにくいからです。
Googleは広告を問題視していないのか
Googleが広告を問題視していないわけではありません。
Googleは2012年の時点で、ページ上部に広告が多すぎて本文を見つけにくいページに対して、Page Layout Algorithmという変更を行っています。この変更は、通常の広告掲載を対象にしたものではなく、ファーストビューに広告を過剰に詰め込み、実際の本文を見つけにくくしているページを対象にしたものです。
参考: Page layout algorithm improvement
また、2017年にはモバイル検索において、本文へのアクセスを妨げる侵入的なインタースティシャルを表示するページは、順位が下がる可能性があると説明されています。
参考: Helping users easily access content on mobile
現在のGoogle検索ドキュメントでも、本文を覆うインタースティシャルやダイアログは、ユーザーのコンテンツ閲覧を妨げるものとして扱われています。
参考: Avoid intrusive interstitials and dialogs
さらに、ページ体験の説明では、過剰な広告が主コンテンツを邪魔していないか、侵入的なインタースティシャルを避けているか、主コンテンツとそれ以外の要素を区別しやすいか、といった観点が挙げられています。
参考: Understanding page experience in Google Search results
つまり、Googleはこの問題をまったく見ていないわけではありません。
それでも広告だらけのサイトが上位に残る理由
問題は、Googleが広告の多さだけで順位を決めているわけではないことです。
検索順位には、ページ内容の関連性、情報量、被リンク、サイト全体の実績、内部リンク構造、更新頻度、検索意図との一致など、さまざまな要素が関係します。
Google自身も、検索ランキングでは多数の要素やシグナルを見て、関連性が高く有用な結果を表示すると説明しています。
参考: A guide to Google Search ranking systems
ゲーム攻略サイトの場合、ページは読みにくくても、情報そのものは豊富なことがあります。
たとえば、次のような情報です。
- アイテム名
- キャラクター名
- クエスト名
- ドロップ場所
- 攻略手順
- アップデート後の変更点
- コメント欄の補足情報
こうした情報が大量にあり、検索語と強く一致している場合、Googleから見ると「ユーザー体験は悪いが、検索意図に対する答えはあるページ」と判断される可能性があります。
つまり、広告の多さはマイナス要素になり得ますが、それだけで必ず順位が落ちるとは限りません。
閉じにくい広告はかなり悪質に見える
問題なのは、単に広告があることではありません。
本当に問題なのは、広告を閉じる操作がわかりにくい場合です。
たとえば、次のようなものです。
- 閉じるボタンが極端に小さい
- 閉じるボタンの位置がわかりにくい
- 背景の余白をクリックしないと閉じられない
- 閉じるボタンに見えるものが広告リンクになっている
- 本文に進む導線と広告クリックの導線が紛らわしい
- 広告とコンテンツの区別がつきにくい
これはSEO以前に、UIとしてかなり問題があります。
Google AdSenseのポリシーでも、広告をメニュー、ナビゲーション、ダウンロードリンクなどのコンテンツと誤認させる実装や、誤クリックを誘う配置は禁止されています。
参考: Ad placement policies - Google AdSense Help
また、Google AdSenseには、誤クリックが発生している可能性のある広告枠に確認ステップを追加する Confirmed Click という仕組みもあります。
参考: About Confirmed Click - Google AdSense Help
つまり、少なくともポリシー上は、広告クリックを誤認させるような設計は望ましくないものとして扱われています。
Cookie同意や年齢確認に広告を混ぜるべきではない
Cookie同意や年齢確認のようなモーダルは、法律やサイトの性質上、必要になる場合があります。
Googleの侵入的インタースティシャルに関する説明でも、Cookie利用の同意や年齢確認など、法的義務のために表示されるインタースティシャルは例外として扱われています。
参考: Avoid intrusive interstitials and dialogs
ただし、これは「必要な確認モーダルが許容される」という話であって、「そこに広告を混ぜてもよい」という意味ではありません。
Cookie同意や年齢確認は、ユーザーに必要な判断を求めるためのUIです。そこに広告を載せたり、広告クリックと確認操作を紛らわしくしたりすると、本来の目的が歪みます。
「法的に必要なモーダルだから許される」ことと、「そのモーダルに広告を載せてよい」ことは別です。
この2つを混ぜる設計は、ユーザー体験として不誠実です。
広告ブロッカー利用を助長している面はある
広告が多すぎるサイトが検索上位に残り続けると、ユーザーは当然ストレスを感じます。
検索結果からページを開くたびに、全画面広告が出る。
閉じるボタンがわからない。
本文にたどり着く前に別の広告が出る。
スマホでは画面の半分以上が広告で埋まる。
こうした体験が続けば、ユーザーが広告ブロッカーを使いたくなるのは自然です。
実際、Coalition for Better Ads は、消費者に受け入れられない広告体験は、広告ブロッカー導入につながりやすいと説明しています。Better Ads Standardsは、消費者が特に受け入れにくく、広告ブロッカー利用につながりやすい広告体験を特定するための基準です。
参考: The Better Ads Standards
Googleもこの流れを無視しているわけではありません。
Chromeでは、Better Ads Standardsに違反するサイトの広告を削除する仕組みがあります。Chromeヘルプでは、ChromeはBetter Ads Standardsに違反するウェブサイトの広告を削除すると説明されています。
参考: Visit a site by turning off Chrome’s ad blocker
また、Chromium Blogでは、ChromeがBetter Ads Standardsに違反するサイトの広告を自動的にブロックする仕組みを説明しています。
参考: Under the hood: How Chrome’s ad filtering works
つまりGoogleは、広告ブロッカーを全面的に推奨しているというより、悪質な広告体験だけを減らし、広告モデルを維持しようとしていると見るほうが近いです。
Googleには広告ビジネスとの矛盾もある
ここには難しい構造があります。
Googleは検索品質を守る側でありながら、広告ビジネスの巨大プレイヤーでもあります。
そのため、ユーザーから見ると、次のような矛盾に見えます。
- 本文を邪魔する広告は問題だと言っている
- しかし、広告過多のページが検索上位に残っている
- Chromeでは一部の広告をブロックする
- しかし、広告そのものはGoogleの収益基盤でもある
もちろん、Googleが広告過多ページをすべて放置しているわけではありません。
しかし、検索順位、広告ポリシー、Chromeの広告フィルタ、広告ネットワークの審査は、完全に同じ仕組みで動いているわけではありません。
その結果、ポリシー上は問題がありそうに見えるページでも、検索結果には残ることがあります。
なぜ完全に取り締まれないのか
Googleがこの問題を完全に取り締まれない理由のひとつは、広告表示が動的だからです。
広告は、ユーザーの地域、端末、Cookie、訪問回数、スクロール位置、広告ネットワーク、A/Bテストなどによって表示が変わります。
Googleがクロールした時点では問題が軽く見えても、実際のユーザー環境では強い広告が表示されることがあります。
また、広告はサイト運営者にとって収益源でもあります。特に個人サイトや攻略サイトでは、広告収益が運営継続の前提になっている場合もあります。
そのため、「広告があるから悪い」と単純には言えません。
ただし、広告が本文を読む行為そのものを妨げている場合、それはサイト運営の都合がユーザー体験を上回ってしまっている状態です。
今後の流れは「広告を消す」ではなく「邪魔しない広告」へ向かう
今後、Webサイト側に求められるのは、広告を完全になくすことではなく、広告を載せても本文が読める状態を保つことです。
具体的には、次のような方向が重要になると思います。
- 本文にすぐ到達できる
- 広告と本文の区別がつく
- 閉じるボタンが明確である
- 法的に必要な同意UIに広告を混ぜない
- スマホ表示で本文を邪魔しない
- 誤クリックを誘導しない
- 表示速度やレイアウト崩れを悪化させない
- 画面全体を覆う広告を多用しない
検索エンジン側も、ページ体験や広告の邪魔さをより細かく評価していく方向へ進む可能性があります。
ただし、すべての広告過多ページがすぐに検索結果から消えるとは考えにくいです。
検索順位は広告体験だけで決まるものではなく、検索意図との一致や情報量も大きく関係するからです。
そのため、サイト運営者側が自分で線引きをする必要があります。
個人ブログが取るべき方向
個人ブログや技術ブログの場合、大手攻略サイトや巨大Wikiと同じように広告量で収益を最大化しようとすると、読者体験を損ないやすくなります。
特に個人ブログでは、次のような価値のほうが長期的には強いと思います。
- 読みやすい本文
- 広告に邪魔されない導線
- 実際に試した内容
- 失敗例や検証結果
- 更新日や前提条件の明記
- 参考資料へのリンク
- 読者が判断できる整理
ゲーム系Wikiは網羅性に強いですが、読者が迷わず理解できる記事は別の価値を持ちます。
広告を載せるとしても、読者が本文を読めることを優先したほうが、長期的には信頼につながります。
まとめ
広告が多すぎて読みにくいサイトでも、検索上位に表示されることがあります。
理由は、Googleが広告の量だけで順位を決めているわけではなく、検索意図との一致、情報量、被リンク、サイトの実績などを総合的に評価しているからです。
一方で、Googleは広告問題をまったく認識していないわけではありません。
2012年にはページ上部の広告過多に対するPage Layout Algorithmがあり、2017年にはモバイルの侵入的インタースティシャルへの対応もありました。現在も、ページ体験の観点で過剰な広告や主コンテンツを妨げる広告は問題として扱われています。
ただし、現実には広告過多のページが検索上位に残るケースがあります。
その結果、ユーザーが広告ブロッカーを使う流れが生まれている面もあります。
Googleが広告ブロッカーを全面的に推奨しているとは言えません。
しかし、検索結果に広告で読みにくいページが残り続けることは、結果的に広告ブロッカー利用を後押ししていると思います。
Webサイトにとって大切なのは、広告を載せること自体ではありません。
広告を載せても、読者が本文を読める状態を保つことです。
短期的な広告収益よりも、読者が戻ってきたくなるページ体験を作ることが、今後さらに重要になると思います。